Art & Architectureは、過去に開いていた勉強会のタイトルです。
建築やデザインを生み出すためのヒントを、日常の中で長期的に探求していく記録として、
建築、美術、都市、デザインなどについて不定期に綴ります。
おもしろいデザインの奥にはどのような背景があったでしょうか。
必ずしも斬新なアイディアやデザインだけが意義があるとは限りません。
日常の見方を変えるデザインにも、意味があると思います。
これが面白い、こんなことができたら。どのような分野の、どのような小さな種でも是非、お教えください。
*こちらの情報は必ずしも正確ではなく、ざっくばらんなメモ書きです。
1. 空間と器 <建築>
左の写真は飯塚小玕斎さんの竹で出来た花器です。花を生ける部分と竹籠の間に空間を意識するそうです。右の写真は、星の王子様に出てくる、象を飲み込んだうわばみの絵です。
空間と器の関係が面白いですね。
建築も、空間と器、どちらか一方だけではなく、それぞれを往復して考えながら、デザインしていきます。
2. 或る町の成り立ち<建築>
世田谷
これは、東京都世田谷区奥沢の地図です。
1881年は農地でしたが、徐々に開拓され道や街区が整備されていく様子が分かります。
また、相続税が高いこともあり、各戸の敷地が世代ごとに細分化され、旗竿住宅なども生まれます。
そのような密集している住宅地を歩きながら観察するのも楽しいですが、
よくよく見ていると幾つもの法則を発見します。
各住戸が南向きのリビングをなるべく取るために、回り込んだ不思議な場所に玄関を設けたり、
建物が南向きの庭を確保するために、不思議な寄せられ方をしていたり。
各住戸が快適な在り方を選ぼうとすると、生き物のようなルールが生まれていたりします。
3. くちる建築 / こわれない建築 <建築>
これはPeter Zumthorのローマ遺跡発掘シェルターです。
スイスにある小さな町、クールの市街の観光案内所で、建物の鍵を借りて街の外れに向かい、自分で鍵を開けることで、やっと見学ができます。 行ってみて、驚きました。シェルターは木製のルーバーで出来ていて、半屋外です。木製なこともあり、なんだか色が褪せています。
しかしながら、経年変化して色あせた木の色は、入口囲いの鉄板のグレーに近づき、馴染んでいます。
また、対照的に、そこまで雨にさらされないシェルター内側は、同じ木でも鮮やかな色味が残っています。
シェルター内には、必要最低限の説明書きがあるくらいで、あとは遺跡と通路があるだけです。
遺跡のシェルターでもあるからこそ、半屋外の状態で保存されていますが、
きっとあと数十年もするとさらに色が褪せて、もしかしたら痛んだり、壊れたりするかもしれません。
ですが、ローマ遺跡が残ってきた時間、シェルターが朽ちていく時間が感じられて、とても良かったです。
私たちは建築に安全さや安心感、なるべく長く残ることをどこかで求めています。
しかし、いつか朽ちて、壊れていきます。
できるだけ丈夫な強固な建築、建築にかかる外力を受け流す建築、くにゃにゃと曲がる建築、少しずつ補修することで維持する建築。
色々な在り方が考えられますね。
4. Atmosphere 佇まいと解像度 <建築>
これは青森県立美術館のスケッチです。
随分前に、Atmosphere、空間のもつ佇まいや雰囲気というものを、どのようにしたら分析できるかと考えたものです。試行錯誤の末、「詳細・素材感」「ボリューム」「可動域」「キャラクター化」という、
人が空間から印象を受けるときに、要素となりそうな、4つの視点に空間を分解して表現しました。
建築を作ることは、また体験することは、このような解像度の往復でもありますね。
5. Special phantoms イメージと抽象化 <建築>
これは、ル・コルビュジェのロンシャンの教会のスタディ模型写真です。
現在のコンクリートで造られた雰囲気とは随分と印象が異なりますが、計画初期には飛行機をイメージしていたようです。建築の歴史を振り返ると、新しい時代の建築を模索するときに、その時代を表すような何らかのイメージがテーマとなってきました。
建築を作るときに、漠としたイメージや感覚的なところから始まることがあります。
そもそもの普段の日常の中で、私たちはものごとを考えるときに、イメージしやすいよう抽象化したり、
細部に戻して具体的に想像したり、その行き来をしていますね。
建築に抽象性を持たせるのは、デザインにおけるその行き来の中で、何か発見があるからでもあり、
使う側の創造力や自由度が上がることにも通じることがあるからかもしれませんね。
6. Style、歴史 <建築>
ルネサンスに対して、マニエリスム、モダニズムに対してポストモダニズム・・・
建築の歴史はその時代の「様式」に対してルールを破ることで作られてきました。
欧州の教会建築であれば、いかに崇高な空間を作れるか、シンメトリー性を持たせ、より高くより光を取り入れれるよう発展してきました。また、その後、宗教改革、絶対王政、フランス革命、国民国家、などの歴史に合わせて建築も変化してきました。
写真はジョセフ・パクストン設計の、鉄骨とガラスで作られた巨大な建築物、クリスタルパレスです。
産業革命を背景とした、鉄とガラス建築の先駆けと言えます。
日本の寺院建築も、和様、大仏様、禅宗様、折衷様・・・三手先や組物によって軒をより深く伸ばしたり、時に屋根を反らしたり。城郭建築と茶室、書院造、数寄屋造り、擬洋風建築、近代建築など、時代に合わせて変化してきました。
寺院教会の象徴性、その後の権威的なもの、表現的なものなどが段々と様式のテーマとならなくなり、自由に建築が作れるようになった今、現代的な認識はどのようなものでしょうか。何か建築の根本みたいなものは変わらないかもしれませんが、現代の感受性みたいなものでつかみなおすとどのようなものになるでしょうか。
7. 新しい建築? <建築>
誰も見たことがない、誰も実現したことがない、なかなか実現できない、スペシャルな新しさ。
身近なものの在り方を少し変えるだけで、見方が変わる新しさ。他の人が真似できる新しさ。
プロジェクトに合わせて目指すところは、変わりますが、色々な新しさがあります。
8. 建築の外側 <建築>
これは福島県会津若松市に建てられた、二重螺旋の栄螺堂です。
二重螺旋が建築の外側、外装に表れていますね。
建築の外側を、素直に建築の空間の作りそのままに表すか、あるいは、内側とは別のデザインとするのか。建築の規模が巨大になったり、建築の機能によっては、空間の作りを外側に表すことは難しくなりますね。
Rem Koolhaasのビックネスでも述べられています。
外観があるともないとも言えない状態、あるいは割り切って、外観の成り立ちが中身と異なる状態、
そのようなものにも面白さがありますね。
9. 付け足された穴 / 地下 <建築>
谷中にある朝倉彫塑館は、彫刻家 朝倉文夫のアトリエと住居だった建物を美術館に改装したものです。
建てた当初は小さな住宅から始まり、35年にかけて増改築が繰り替えされ、和洋が混ざった面白い作りです。
2011年、旧アトリエの床板を構造補強のため取り除いたところ、地下室が掘られていた形跡が見つかったそうです。
当時、アトリエでは8mを超える銅像を制作していたこともあり、「見る方向で違う形の変化を研究したい」と、
下から見上げる像の姿にこだわったそうですが、重量のある銅像は持ち上げられないため、土を掘り、自ら地下にもぐったとのことです。
彫刻を見上げるための引きの空間を付け足すため、地下を掘ってしまう発想が、面白いですよね。
話がずれますが、東京都内を歩いていると、都内の土地のうち、一体どのくらいの割合の地下が掘られているのだろうと思ったりします。地表の都市の機能を補い、地表の空間を確保するために、膨大な空間が地下に付け足されていますね。
©朝倉彫塑館
10. 建築を取り巻く、問い。 <建築>
身近な日常から大きな社会構造まで、あるいは自然現象であっても、多くの物事には成り立ちや仕組みがあります。当たり前ですが、建築を考えるということは、そういう自分たちを取り巻く要素に対して、何らかの形で答えるということでもあります。
プロジェクト毎に、どのようにしたらもう少し良くなるか問う、ということが建築の仕事ですね。
その時に必ずしも空間の発明的なものが答えとは限らないですし、表現をするということが主題にはなりません。
そのようなことについて、大なり小なり、考えてみようと思います。
11. どんな状態が居心地が良いか。 <建築>
まだ考えているところなので、ゆっくり書いていきます。
1. デザインをどう見るか <デザイン>
デザインは、産業革命によってものづくりが手工業による工芸から機械による大量生産に移り変わり、
モダニズムの中で新たな生活様式が模索されたところから始まった、と言われています。
1880年代のアーツ&クラフツ、アールヌーボー、バウハウス、ロシア構成主義、アールヌーボー、1920年代のアメリカのインダストリアルデザイン・・・
などと、デザインは建築史や美術史と大きく絡みながら、その形を変え、新しいスタイルが生まれていきました。
日本では、1928年に設置された商工省工芸指導所によって産業合理化政策が行われました。工芸の機関紙「工芸ニュース」を発行したり、海外からブルーノ・タウトやシャルロット・ペリアンなどを招待し、その指導によってインテリアデザイナーの剣持勇さんなどを輩出しています。剣持さんらは日本のデザインの礎を作ったと言われています。
デザインは、美術的な側面や実用な側面から見ることができますね。純粋美術(芸術)と応用美術(産業)とも言ったりもするみたいです。その振れ具合は色々で、見方が難しかったりもします。しかしながら、その位置づけを振り返ってみるのは建築に通ずるところもあって、面白いものです。
昔は、建築家が家具などもデザインしましたが、その領域はどのようになったでしょう。また、建築と内装デザインの領域はどのように捉えられるでしょうか。そこにおけるものの捉え方の違いも面白いですね。
2. 船 / 浮力と重力 / 水と空気の粘性の違い <デザインの番外編>
船には建築物とは少し異なる力が働いています。
大きく異なるのは、土地に定着しておらず、押しのけた水の浮力と船の重さである重力の釣り合いで
成り立っているところですね。
船先が海面をかき分けて、受け流す波の振れ幅が手掛かりとなって、船の胴体のラインは決まるそうです。
波のラインはY=sinΘ、Y=cosΘで表され、船の形は、航海する海によって変わります。
また、風を受ける上物部分と、水を受けるボディの部分は、受ける空気と水の粘性が異なるので、
異なる計算をするとのことです。興味深いですね・・・
船にこだわらず、浮力の浮かびあがる力を使ったとしたら、どんなことができるでしょう。
探訪・視察記録 2020.10~ <その他>
2021/07/22 (木) 菅野光子 「まぶたのうら うらにわ」
2021/06/21(土)-22(日) 新潟
視察として、潟博物館、湧水館、新潟市甲南区文化センター、十日町産業文化発信館いこて、十日町市市民交流センター分じろう、十じろう、越後妻有交流館キナーレ、十日町情報館、光の館、越後松之山森の学校キョロロ、まつだい雪国農耕文化村センター、雪のまちみらい館、バタフライパビリオン、等
2021/05/29(土) 仙台
宮城県立美術館「足立美術館展」
2021/05/24(月) 東京
Louis Vuitton 銀座並木通り店、IBIZA銀座ショールーム見学。
視察として、Gallery A4、TOTOギャラリー・間にて、お話をお聞きした。
2021/05/15(土) 気仙沼
高橋工業さん、さとうみステーション、気仙沼大谷のみんなの家
2021/05/05(水)会津、須賀川
福島県立博物館、福西本店、はじまりの美術館、須賀川市民交流センターtette
2021/04/29(木) 泉
宮城県図書館
2021/04/26(日) 仙台
Gallery TURN ROUND「Ms,コレクション展」、Gallery TURN ANOTHER ROUND「木村 良 絵画と陶芸展」
2021/04/25(土) 多賀城、塩釜、松島
東北歴史博物館、ビルドフルーガス「浅野友理子個展」、瑞巌寺宝物館
2021/04/19(月) 天童、山形
天童木工さん、山形段通さん
2021/04/17(土) 白石、丸森
しらさぎ橋、大蔵山スタジオさん
2021/04/10(土)多賀城、石巻、牡鹿半島
菅野美術館、石巻市複合文化施設まきあーとテラス、もものうらビレッジ、牡鹿ビレッジ、おしか番屋、女川駅
2021/04/09(金)釜石、陸前高田、気仙沼
釜石市民ホールTETTO、釜石市復興住宅群、釜石市唐丹地区小中学校、釜石市立釜石東中学校、うのすまいトモス、いのちをつなぐ未来館、高田松原津波復興祈念公園、陸前高田 陸前高田市庁舎、陸前高田まちの縁側、陸前高田市立博物館(建設中)、気仙沼市復興祈念公園
2021/03/30(火)卸町
スタジオ開墾、TRUNK
2021/03/16(火)-17(水) 山形、鶴岡、酒田
視察として、やまぎん県民ホール、東北芸術工科大学、三瀬さんのアトリエ、山形美術館、スイデンテラス、SORAI、荘銀タクト鶴岡、アートフォーラム鶴岡、致道館等重要文化財群、本間美術館、酒田市美術館、土門拳記念館、出羽遊心館 、山居倉庫を見学。
2021/02/23(火) 塩釜、陸前高田
塩竈市杉村惇美術館「風景の練習」展 、 高田松原津波復興祈念公園を見学。
2020/01/14(木)-15(金) 八戸、十和田
視察として、八戸市美術館、はっち、マチニワ、ブックセンター、十和田美術館、十和田市民交流プラザ、十和田市民図書館、新渡戸記念館外観を見学。十和田美術館では、去年就任された鷲田めるろさんからお話をお聞きした。
2020/10 Switzerland, Basel, Chur, Zurich, Luzern
Fondation Beyeler, Tinguely-museum, Basler Kunstmuseum, Kultur- und Kongresszentrum Luzern, Pavillon Le Corbusier, Shelter for Roman Ruins, Bündner Kunstmuseum,
デザインメモ <その他>
2021/07/06(火) 本「奇想の系譜」辻 惟雄
1970年刊行、「眼の神殿」と並ぶ美術の名著。37歳の時に書かれたという。村上隆などにも影響を与えている。
伊藤若冲を含めた、異端とされて忘れ去られた江戸時代の6人の絵師の作品を解説。奇想の前衛たちと捉えなおすことへ繋げた。
2021/07/05(月) レクチャー 清水健人さん
仙台メディアテークで学芸員をされている清水さんからお話をお聞きした。メディアテークでの企画展は開館当初からメディウムをテーマに、コンテンポラリーの美術に関する展示が行われてきた。コレクション自体は行っていない
。企画展の進め方や、志賀理恵子さん、青野文昭さんを初め、扱ってきた作品が紹介された。メディアテークで展示をする場合にアーティストが空間に対してどのように向き合うか、というお話も聞けた。宮城県美術館が近現代美術、海外の表現主義美術、宮城・東北をゆかりとした作家を扱っているのに対して、施設同士の連携はあまりないものの、立ち位置の違いがあって面白い。
2021/06/30(水) シラス 五十嵐太郎さん×市川 紘司さん×吉川彰布さん
五十嵐さんの博士論文のテーマとなった、新宗教建築物についてのレクチャー。建築の研究分野として抜け落ちている近代宗教建築物の範囲に目を付け、まとめられた。なかなか知ることのない世界、また、どのように資料を集めたかなど、学生時代のお話も聞け、興味深かった。
2021/06/29(火) 本「眼の神殿」北澤憲昭
1989年に発刊された美術の名著。38歳の時に書かれたという。 西洋から移植された美術が日本でどのように形成されていったか制度や施設の視点から述べている。高橋由一の螺旋展画閣から始まり、文明開化期における物産会や博覧会、博物館、美術館、フェノロサと国粋主義運動、など事象と制度の定着を丹念な研究の基に、まとめている。
2021/06/28(月) レクチャー西澤徹夫さん
京都市京セラ美術館、八戸市美術館についてお話をお聞きした。京都市京セラ美術館では、現在のニーズに合わせた保存と活用方法を選択し、将来また起こりうるリノベーション時にその時の建築家の判断で改修できるよう、現状を記録として残している。1933年に作られた既存建物に対する、新館・休館の振る舞いの取り方が興味深い。また、八戸市美術館では、建物単体で完結せずに既に八戸市内で活用されている文化施設との連携の中で、立ち位置が提案されている。展示からラーニングするのではなく、同等のものとして、徹底して使い倒される美術館として今後の展開が楽しみである。
2021/06/19(土) ギャラリー・トーク宮城県美術館
宮城県美術館の成り立ちとコレクション形成、それぞれの作品、教育普及活動についてのレクチャーをお聞きした。
コレクション形成では、宮城・東北ゆかりの作家、日本の近現代、表現主義を中心とした海外美術を3本の軸としていた。美術館が開館した当時は表現主義の評価が固まりつつあった時期で、思い切ってクレーやカンディンスキーなどを入手したとのこと。美術館を固めていくために作品をどのように収集していくかという戦略は、興味深い。
2021/06/17(木)レクチャー武藤隆さん
美術館・展覧会・あいちトリエンナーレについてお話をお聞きした。あいちトリエンナーレのお仕事では、アーキテクトという役割を担当され、アーティストのリクエストに合わせて作品が際立つように最適な展示空間を作ることに徹されている。芸術祭に関して、アーティストやキュレーターの方とはまた異なる立場から、お話をお聞きできる機会はなかなかないので、とても興味深かった。
2021/06/07(月) 本 「リノベーションから見る西洋建築史 歴史の継承と創造性」伊藤喜彦、他
2021/06/07(月) 本 「時がつくる建築 リノベーションの西洋建築史」 加藤耕一
近世以前の時間の西洋建築は、建築に時間がかかり、その途中での設計変更や用途変更も多かった。それらの一つ一つの既存建築物をリノベーションする際に、状態をどのように評価し、過去のどの地点の様式に戻す判断をしたか、どのような対応をしてきたか、という建築観の変化を述べられている。特に、その振る舞いが「再開発」「修復/保存」「再利用」という3つの態度に分けられていたりするなど、概念の成り立ちが理解しやすく、時代ごとの判断を比較しやすい。また、リノベーションという枠を超えて、建築と時間や、建築という行為そのものについてなど、大きな概念の変遷も語られており、とても興味深い本。
2021/06/04(金) 本 「芸術企業論」村上隆
アートにおける戦略論。欧米のルール、欧米の市場の構造や文脈を徹底的に分的し、自身を売り込み方を駆け引きしながら実践。そのためには、本場のニーズに合わせて作品を変えることも厭わない。また、その次の段階として、日本人の好みに合わせた作品を逆輸入する。禁欲的に作品を制作する一方で、アジア人・日本人が世界のアート史に残るにはどうすればよいかという試行錯誤と村上氏の熱量を包み隠すことなく開け広げている本。
2021/05/30(日) 本「現代美術史」山本浩貴
まだ定義の定まり切らない現代の美術に関する通史。怒涛の情報量で、美術館からコマーシャルギャラリーやマーケットの動向まで語られていて、私たちがまさにリアルタイムで体験している美術の体系化に役に立つ。
2021/05/22(土) 本「マイクロポップの時代-夏への扉」松井みどり
2007年に水戸芸術館で開催された展覧会のカタログと宣言文。イデオロギーから離れた、小さな断片の集まり、視点のずらし、日常の出来事、幾つかの見方ができる、状態。/ 1980年代のアメリカの消費社会・大衆芸術においてオリジナルの価値を問い直しイメージをいじるシミュレーショニズム、1990年前後の日本のサブカルチャーをポップとしたネオポップ、の次世代的概念として位置づけられた。/その後、3.11が起こってまた流れが変わったと思われる。建築との関係も少し見ていきたい。
2021/05/18(火) レクチャー 「保存修復における技法と思想」田口かおりさん
美術品の保存修復における技法や思想について。アートも、物質や素材でできているため、傷んでいく。その際、制作当時の情報が少なかったり、どのような材料や意図で作られたのか等、がわからないものも多い。そのような場合、作品ごとに調査や推測が行われ、修復の判断がされる。美術品の経年というものをどのように捉え、どの時代の状態まで戻すかということは、作品の意図もう一度捉え直すことでもある。また、保存のターゲットは何なのか等々、テーマの幅がかなり広く、判断が興味深い分野である。
2021/05/14(金)本 「20世紀末・日本の美術-それぞれの作家の視点から」
美術作家と共に、1989年から2003年までの美術を振り返っている。批評媒体や情報発信の変化、グローバルな美術市場やコマーシャルギャラリーの台頭、スーパーフラット的な考え方やサブカルチャー、時代を牽引してきた美術的な出来事について述べられている。現代史という評価がはっきりしない範囲だからこそ、一つの見方として、興味深い対談である。現代史も、年で区切っていくと、既に歴史であり、少し過去なんだなと思い出されて、面白い。インターネットが出てきて、価値が激動してきた時代だから、さらにそう感じさせるのかもしれない。
2021/04/29(木) 雑誌「工芸ニュース」
1928年に仙台に設立された日本初の国立の工芸研究機関、商工省工芸指導所。剣持勇、豊口克平らを輩出し、B.タウトや C.ペリアンを招聘していた。当時のB.タウトの行動記が面白い。また、剣持さんの文も、バウハウスを意識するなど、デザインに真っ向にぶつかり、気概に溢れている。また、天童木工などその歴史に指導所が絡んでいるものも多い。
2021/04/26(月) 本「芸術の中動態」森田亜紀
メルロ=ポンティの著作が、知覚と世界の関わりが基盤になっていることを引き合いに出し、能動「~をする」受動「~をされた」の関係とは別の第三の態、作為的でない状態(「~が見える」など)を中動態と定義。芸術における受容・制作体験を中動態を使って読み解く。これが建築においてはどうなのかという視点で読むのも面白い。
2021/04/25(土) 本「飯塚小玕斎」
画家を志したものの、代々の家業である竹工芸の道へ進んだ。初期は竹を素材に絵画的な作品を発表していたが、次第に工芸とはどうあるべきかを問い、用の美へ移っていく。花器は、花を生ける部分と竹かごの間に空間を意識するという。